日本経済法学会理事長挨拶

 日本で初めて「経済法」(Wirtschaftsrecht)という言葉を用いたとされる孫田秀春『労働法総論』(改造社・1924年)が刊行されてから、今年でちょうど100年です。戦前の日本経済法学会の研究対象と研究態度に対する反省をふまえて、1951年に「経済法学会」が設立されてからでは70年以上が経ちます(1996年に「日本経済法学会」に改称)。

 学会創設直後の研究対象の模索を経て、日本経済法学会は、現在では独占禁止法や公益事業法などの「経済法の研究及びその研究者相互の協力を促進し、あわせて内外学会及び関係諸団体との連絡を図ること」(規約3条)を目的として活動しています。具体的には、毎年10月に研究大会を開催し、個別報告とシンポジウムを行って、その内容を機関誌である「日本経済法学会年報」(有斐閣)に公表する形で、研究成果を社会に向けて発信しています。

 また本学会は、設立25周年記念として「独占禁止法講座」全7巻(商事法務研究会・最終巻は1989年)を、50周年記念として「経済法講座」全3巻(三省堂・2002年)を刊行するとともに、2017年には「独占禁止法70年」というテーマの下に目下の独禁法をめぐる様々な諸問題についてシンポジウムを開催しました。

 近年、デジタルエコノミーと地球環境問題への経済法の対応が会員の大きな関心を呼び、こうした新しい課題の解決に向けた研究が盛んになってきています。これらは極めて重要なものですが、学会に課された使命はそれにとどまらず、経済法の基礎理論、歴史研究、学説史、比較法研究なども含みます。ともすれば忘れ去られそうな社会経済的問題にも目配りが必要であると考えられます。

 こうした諸問題に対応し社会に貢献するべく、一層の努力を重ねていく所存ですので、日本経済法学会へのご支援・ご協力をお願い申し上げます。
         
日本経済法学会理事長 土田和博 (早稲田大学法学学術院教授)




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